取調の可視化に向けて

c0132608_1549762.jpg先日、横浜弁護士会主催の、【弁護士フェスタ in KANAGAWA】のプログラムの一つとして、「取調過程の全面可視化を目指して~足利事件に学ぶ」と題するミニシンポジウムが開催されました

当日は、主催委員会のメンバーとして受付係を担当させていただきましたが、その席に座ることができたのは、本当に得難い機会になったと改めて思っています

シンポジウムでは、元被告人として長期(17年間)に亘り身柄拘束されていた菅家利和さんが、足利から横浜まで来て下さって、ご自身の経験や、これまでと今現在の思いについて、貴重なお話をして下さいました

そして、足利事件の弁護団のメンバーでいらした東京弁護士会の泉澤章先生も来て下さり、菅家さんがどのような取調や訴訟手続きを経て判決が確定したかということや、再審請求から再鑑定、釈放、再審公判における無罪判決に至るまでの経緯、そして、そこに存在した様々な問題点を指摘して下さいました

足利事件については、ここ3年ほど、様々な形で繰り返し報道されており、概ねの経緯は知っているつもりでしたが、実際に目の前でお話を伺い、時系列に整理された裁判手続きの経緯を確認するにつけ、法曹の一員として、申し訳ないような気持ちになってしまいました

この事件に関わった関係者たちの事件に対する向き合い方が、初期段階の自白調書によって、軌道修正に20年もの歳月を要するほど大きな影響を受けたことは、紛れもない事実です

やっていないことを「やった」と言わざるを得ないような心境に至らしめる取調手法については、実際に経験してみなければ、なかなか理解できないものかもしれません

しかし、このシンポジウムの後半に再生された、昨年、大阪府警の警部補が任意で取調中の男性会社員に対して暴言や罵声を浴びせた時の録音データを聞いた今回のシンポジウム参加者は、それを実感をもって理解せざるを得なかったような気がします

そして、今や、イギリスでは警察での取調の録音・録画が当然のように行われ、そこに弁護人も立会っており、そのような形での取調の可視化が、取調官の取調技術の向上と捜査の公正さに大きく寄与しているという日弁連取調べの可視化実現本部の視察報告も紹介されました

イギリスにおける1984年の警察刑事証拠法成立による取調の録音義務づけは、その後、香港、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ等イギリス連邦系の国のみならず、韓国、モンゴル、イタリア等での取調の可視化に影響を与えたとのことです

平成22年11月12日には、横浜弁護士会も、取調の可視化を義務づける法律制定とその早期実現を求める会長声明を発表しており、同年12月16日には、横浜市議会も、被疑者取調の可視化の実現を求める意見書を全会一致で政府に提出していますが、今回のシンポジウムは、このような大きな流れの中で、とても有意義なものだったのではないかと思います

足利事件のような、不当な取調、そして、それに基づく裁判が二度と行われないことを切に願って止みません
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by kaikou-law | 2011-02-01 18:30 | 法律
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